1. 2/23(日)Colombo からVavunuyaへバスで移動した。(片道約6時間半) Vavunuyaでは下記のような活動を行い、本実地調査当初の目的の8割くらいを達成することが出来た。
(1) 当初2/25(水)に実際の地雷除去現場を視察する予定であったが、UNDPのMine Action Adviser:Ms. Leonieの強い勧めにより2/24(月)から2/27(木)までの3泊4日間、Talaimannar (Mannar半島の先端北側)で地雷除去を実施しているFSD地雷除去チーム2個チームと生活を共にし、地雷除去現場を視察してきた。
(2) FSDの地雷除去スーパーバイザーから現地人の地雷除去要員、地元住民に至るまでいろんな人と話をした。また、地雷除去に必要な全ての機材(メーカー名、型番)・地雷除去現場の写真をとり、人道的地雷除去活動の理解を深めることが出来た。
(3) 2/27(木)夜、Talaimannar からVavuniyaに戻ってきた。 私が地雷現場に滞在する4日間に、UNDPのMs. Leonie が私の代わりに地雷除去プロジェクトに必要な機材全ての3者見積りをUNDPの会計担当スタッフに命じて準備する約束であったが、ほとんど出来ていなかった。2/28(金)午前中、FSDのVavuniya事務所でスリランカProgramme Manager: Christoph Hebeisen氏及びFSDジュネーブ本部から出張で来ている Programme Manager: Jasper Harrison氏(3月末で退職)と面会しFSDが過去に購入した機材の購入価格がわかる書類(領収証など)のコピーをさせてもらえるようにお願いした。彼らの返事は「昨年World Food Programme(WFP)に資金援助を申請した書類(添付文書:Proposal to WFP, Proposed Budget)をE-Mailで提供することはできるが、見積りや領収証などのコピーはできない」という非協力的なものであった。彼らはすぐにKirinochchiに出発するため3/8(土)にFSDのColombo事務所でMOU締結に関して話し合う約束をして別れた。
(4) 2/28(金)午後、3/1(土)午前中は、UNDPが過去に購入した事務所用機材の領収証などを会計担当スタッフに一つ一つ探し出してもらいながらコピーした。
(5) 3/2(日)購入すべき全ての機材の内、価格をコピーできた機材名と価格をコピーできていない機材名を英語で一覧表にまとめた。また、3ヶ月間のJICA技術者派遣時に滞在するアパートの情報収集を行った。
(6) 3/3(月)4(火)は、UNDPから経理担当のFSDローカルスタッフに電話をかけてもらい、UNDPのコピー機でFSDが以前購入した機材の領収証等をコピーするよう依頼してもらった。そのお蔭でFSD Vavuniya事務所にある関係書類をほとんど全てコピーすることが出来た。(これらの書類をまとめれば、何とか申請書を作成できる)
(7) 3/5(水)午前中は Vavuniya県の県庁会議室で開催されたVavuniya地区の地雷対策会議(Vavuniya県の知事のような立場のGeneral Agent(GA),陸軍地雷除去担当少佐、UNDP,UNICEF,FSD、回避教育を行っているCTFなどが参加)に出席し、JCCPがVavuniya地区に拠点を設け、FSDと協力して地雷除去活動を開始する旨を皆の前で説明し、関係各位の協力をお願いしてきた。VavuniyaのGAはとても有能そうなタミール人で、当センターの地雷除去プロジェクトを歓迎し、協力を約束してくれた。
(8) 3/5(水)午後はColomboへ戻るための残務整理をしながらMs. Leonieと今後の方針について話し合った。FSDが非協力的であるのであればMs. Leonieが以前地雷除去スーパーバイザーとして勤務していたフランスのNGO:Handicap Internationalに話を持ちかければどうかと言われたが、今はFSDと共同プロジェクトを開始することに集中すべきであると思う。
2. 3/6午後VavunuyaからバスでColomboに戻ってきた。NGO支援無償の申請に必要な資料収集(購入機材の見積り等)およびFSDとMOU締結準備等は終了していないが、同業務を進めつつ同時並行的にNGO支援無償の申請書作成を開始した。Vavuniyaで会った医療系NGO:AMDAの職員の話では、外務省本省に申請書を提出しても実際の審査は在スリランカ日本国大使館の井関一等書記官(経済協力担当)が担当するらしい。そこで早速3/7(金)午後井関一等書記官に面会し、申請書作成に関する注意点を下記のように説明して頂いた。
(1) 一般に地雷除去プロジェクトに関する申請には地雷除去要員の給料も資金援助の対象になるが、スリランカでは「機材の購入」のみ支援対象とする。これは今年1月に国際地雷除去NGOのHALO Trust, MAG/NPAに対人地雷草の根無償資金協力を承認する際、LTTEサイドのTRO/HDU地雷除去要員に支払う給料がLTTEの軍事資金に変わる可能性を懸念し、機材の購入にのみ資金援助することにしたためである。その関係でJCCP/FSDの雇用する地雷除去要員がHDUと関係なくても公平性を保つ意味でローカルスタッフの給料は一切支援できない。
(2) 外国人地雷除去専門家、日本人スタッフの給料も、全額は無理である。(1/4~1/3くらい)セミナー等の専門家講演依頼費などは出る。
(3) 地雷除去活動に今まで実績の無いJCCPが「対人地雷草の根無償」を申請しても審査に通る可能性は極めて低い。
(4) 外務省は申請段階で実際の業務を実施することができる状態のNGOにのみ支援する。(申請の段階で地雷除去訓練等が終了していなければならない。)
(5) 地雷除去プロジェクトの申請書に、どこの地区の地雷を何時までに処理し、その結果どのような効果が期待できるかを具体的に明記しなければならない。その際に、他の地雷除去団体(MAGなど)が今後地雷除去を実施する予定ではなく、「対人地雷草の根無償資金協力」の支援が無ければ大きな問題になるという明確な理由が必要である。
(6) 地雷除去機を購入する資金は支援対象であるが、すでに他の国で使用したことのある機械で、今回の地雷除去地域の地形・植生などでも100%に近い地雷除去率が期待できる機種であることを書面で証明する必要がある。また、機械を操縦する人が以前にその機械の熟練者であることも明記する必要がある。(操縦担当者の略歴添付)さらに、操縦手の給料をどこから確保するかも明確に示されねばならない。
(7) 購入機材の3者見積りは特殊な機材を除き必ず必要である。他のNGOもしっかり3者見積りを準備して申請書を作っている。
(8) JCCPとして地雷除去を始めたいのであれば、もっと時間をかけて準備し、人材的にも組織の態勢的にも自信を持って地雷除去活動ができる状態になってから「対人地雷草の根無償」を申請すべきである。
3. 上記のことから、当センターが「NGO支援無償」を申請するのではなく、FSDの名前で「対人地雷草の根無償」として大使館に英文申請書を提出する方が審査に通る可能性がある。
4. 実は昨年FSDもHALO Trsutなどと同様に「対人地雷草の根無償」を申請したが審査の結果申請が通らなかったらしい。その理由を井関書記官に尋ねたが、教えられないとのことであった。FSDはWorld Food Programme(WFP)が農地化する地域の地雷を除去するため、WFPに約83万USドル(約1億円)の資金援助を申請しており、それが審査を通過しそうな状態である。(申請には地雷除去機も含まれる)その関係で日本政府が「対人地雷草の根無償」で支援する必要がないと判断した可能性がある。
5. 当センターとしては、FSDが前回の「対人地雷草の根無償」の申請で審査に落ちた理由を、阿曽村所長のお力で外務省筋から何とか把握して頂いた上で、HALO Trust・MAG/NPAの担当エリア, WFPの支援の地雷除去地区と全く関係の無い地雷埋設地域をUNDPから割り当ててもらい、FSD/JCCPが「対人地雷草の根無償で支援を受けて早急に地雷除去を実施しなねれば重大な被害が予想される」というストーリーを組み立て申請するのが得策であると考える。
6. 地雷除去地域をGeneral Agent(GA)と相談して決定する立場のMs. Leonieには、上記地雷除去地区確保の必要性等を電話で説明し、地雷除去地域を確保してもらえるように根回しをしておいた。(彼女は3月後半休暇で留守になる予定)
7. 井関一等書記官には、日本のNGOであるJCCPが人道的地雷除去活動を開始する意義を説明し賛同を得た。彼女は、今後当センターが意図する活動が開始できるよう陰ながら協力すると約束してくれた。
8. 以上のことから、第2次実地調査開始前に予定していた「NGO支援無償」の申請を3/10からの1週間で仕上げて、早急に外務省に提出するのは得策ではなく、もう一度地雷除去活動を始めるための戦略を練り直す必要がある。
9. 私としてはJICAの技術者派遣の3ヶ月間にFSDが「対人地雷草の根無償」を審査に通るような形で在スリランカ日本国大使館に申請できるよう、FSDのスリランカProgramme Manager: Christoph Hebeisen氏と井関一等書記官の間を行き来きして業務調整する役割を担うことを考えている。
10. ただ、FSDのスリランカ責任者であったJulie女史が国連本部の職員としてニューヨークに栄転した関係で、国家公務員(スイス軍現役大尉)のChristoph氏がその後の業務を行っているが、彼は根っからの軍人で事務仕事を嫌う。3/8(土)午前中、FSDコロンボ事務所を訪問しMOUの締結に関して、「現場責任者同士でMOUの案だけでも作ろう」と話を持ちかけたが、「JCCPのHQとFSDのHQ(ジュネーブ)で話し合って決めてくれ」という後ろ向きな返事である。スイス軍からFSDに出向中の彼に話をしても埒が開かないので、FSDジュネーブ本部の政策責任者Ivan Clarke氏 もしくはDirectorのHansjorg Eberle氏と話を始めなければならないと考える。(Rue du XXXI-Décembre 36, CH-1207 Geveva, Switzerland, Tel +41 22 737 20 43, Fax +41 22 737 20 49)
11. また、Christoph氏自身もFSDのスリランカ責任者として多忙な日々を送っており、「対人地雷草の根無償」の英文申請書、細部実施計画、経費見積り等の煩雑な文書作成を彼にやらせるのは難しいようだ。(彼も英語はあまり得意でない)上記申請書類は、辰巳がMs. Leonieの協力を得ながら時間をかけて作成するのが現実的であると考える。地雷除去のスーパーバイザーである元軍人たちは下士官クラスが多く、FSDのマネージメントには一切タッチしない。
12. 幸いMs. Leonieのご好意により、UNDP Vavuniya Officeの中に私の事務机を確保することができた。JICAからの派遣期間(3ヶ月)、UNDP Vavuniya Officeを自分の事務所のように使用することができる。また、Ms. Leonieは辰巳が作成する申請書・計画書(英文)をチェックし修正することも承諾してくれた。(但し毎週火曜日と金曜日の夕方、彼女主催のリズムキックボクシング教室で辰巳が皆に少林寺拳法を教えることが条件である。)
13. 辰巳は予定通り3/10(月)の昼頃に成田に到着する。到着後その足でパスポートを「NGO技術者派遣」ビザ申請担当の旅行会社(神谷町)に届ける予定である。そちらには16時過ぎに到着すると思われる。
14. なお、今回の実地調査はNGO支援無償の申請に必要な資料の収集が主な目的であったので、昨年の12月に実施した第1次実地調査時に作成したような詳細な議事録は作成していない。また、地雷除去要員、スーパーバイザーの給料の確保が困難になったため、笹川平和財団に提出した「スリランカ地雷除去プロジェクト実施3年計画」を大きく修正する必要性がある。辰巳帰国後に地雷除去プロジェクトの今後の方針を話し合い、当センターとしての方針を再決定した上で、その方針に添った形の調査報告書をまとめ笹川平和財団へ提出したいと考えている。
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